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タウトのアルプス建築について

三角定規とブルーノ・タウトと雪舟と

学生のとき、建築学科の授業で図面や模型を作ったことがあった。担任の先生にほめられて、建築をやらないかと誘われた。建築も写真も頭を使う職業だから自分にはむいてないと思い、断念したが、このとき、ブルーノ・タウト(1880−1938年)の存在を知った。だが、それだけのことであった。しかし、そのときに見たタウトの空想建築画集『アルプス建築(Alpine Architek-tur)』(1919年)のスケッチに魅了された。ある一定の間隔で、透明な三角定規の直角を頂点としながら何枚も横へ重ねて並べたようなデッサンは、それそのものがアルプスの情景になっていて、実に直裁なペン裁きで描かれていた。もっと驚いたことは、ピラミッド型をした山並みの間を美しいドットで描かれた雲がたなびいていて、よく見れば、雲のおかげでアルファベットの「A」文字がそこに隠されてあった。縦組にデザインされたタイトル文字「LPINE」の謎は解けて、「A」+「LPINE」すなわち「(A) LPINE」であった。なんとユーモアで、なんと気品ある意匠かと感心したことがあった。

しかしそのこともいつしか忘れてしまったが、1995年だったか、新宿区の図書館で偶然にもそのデッサンとまた出会った。

私にはどうやらハサミで切ったような直裁な線と、流れゆく柔らかな線への憧憬癖がたえず混合しているようで、おかげでいつも矛盾している。まるでジキル博士とハイド氏や、狼男のような苦しみを受難しているようでならない。 1994年には「小町のざらし紀行」という柔らかな線を主体にした絵で個展したばかりだったが、その少し前には「ダブルW形ミトラヴァルナ」展という直裁な線で個展をしたことがあった。そして1996年には、「直角の詩」というテーマで個展をしようと考えていた。だから「アルプス建築」のデッサンとの出会いはとても新鮮であったが、いまだ「直角の詩」ではそれを生かすことはできなかった。


しかし、ある日、雪舟の「秋冬山水図」を無性に描きたくなった。何枚も何枚もデッサンを試みて、もう諦めようかと鉛筆を紙の上へゴロンとほうり投げたとき、わたしなりの「秋冬山水図」がそこに完成していた。雪舟の骨太い垂直な断崖が黒いコンテ棒の鉛筆によって形造られていたからだった。このとき、ようやくブルーノ・タウトの『アルプス建築』の静謐さへ近づけたようでならなかった。

タウトの『アルプス建築』の意図するところはあまりよく解らないが、このたびの「三千彦み組虚空博物館」建築計画には多大な影響を受けている。そんなならずな気分でタウトを語るとは、タウト研究者には誠に失礼なことであろうが、私なりに少しここでタウトに触れてみたかった。





道で拾った太い針金を断崖に見立てた
雪舟「贋 秋冬山水図」です。


                       工事中です。