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W e l c o m e !

VIVA MICHIHICO MIGUMI                    

WEB MUSEUM                

Atelier Snow_Drop

Illustrator & Poet

 

 

 

 




 

IN MY LIFE
     
+       - 
  Le Sang d'un poete

 

ボクの人生は、人工衛星に乗っけられて宇宙で死んだ可哀想なライカ犬よりは、幸せ!
                             ・・・映画『My Life As A Dog 』より

わたしの詩は、眼の見えない犬の散歩のついでに見つけたなんでもない風景やモノの観察の中にあって、どうしょうもなく滲み出てくる不安や怒り、夢や幻、希望や驚きを思いつがくままに書きまとめたものである。

平ら成る時代、日常と云うあてどない流砂のただなかにあって、バラいろのゲシュタルトは崩壊し、情景はたえず反逆しつづけているから・・・噫・・「in my LIFE +Le Sang d'un poète」、詩と絵がわたしの生活の中で増殖してゆく・・・。
ぷぷい! サブタイトルに大詩人
ジャン・コクトーの映画『詩人の血/ルサンデポエット』のタイトルを紋章として横領したことは畏れ多いことであるが、正直、かの魔王の血の一滴を横領し、月並みな野の花にその特製のジュースをぶちまけて、灰色の街を赤い罌粟畑にせんが為の企てであって、すべては散歩の予兆から始まった。あっは! 走るともなく、歩くともなく・・・


        

                           風の通り道・・・。
                           内と外がない浅茅ヶ宿のような処で、花鳥風月星とたわむれながら好きな
                           絵や詩をかいて暮らしたいと、いまも時々そう思います。写真はそんなコ
                           ンセプトで撮影されて、雑誌「フローリスト」に掲載されました。

                          

 八つ乳房

風上へむかって旅をしてみょう
甘くすえた白かびのようなの
腐りかけた剣(つるぎ)の匂いがするだろう
そこがきみのふるさとなのだ
手と
足と
牙と
尾と
八つ乳房にて立つ母がいて




 種子学

ほんのすこし寒いけれど
氷の橋を渡ってごらん
世界はみんなつながっていて
ママンという白いオオカミの
可愛い子どもたちが跳ねている
おまえとかれらは兄弟だから
一族郎党受難の曲を
ウオオオーと合唱しょうよ




 精 霊

見えるかい
見えるだろう
あんなに光っているのだから
おまえにもきっと見えているはずだ
気持ちをしっかりおちつけて
瞳をしずかに閉じてごらん
ほら金色のパラソルが
すっかり開いているのだから




 白い象に触れて

人生という旅をしつづけていると
自分がどこにいるのかわからなくなるときがある
ある日 白い張り子の大きな象が置いてある寺へ行って
納骨堂のあたりを歩いていたら
伽羅のいい匂いがしてきた
ああ 自分はあたたかなものに包まれながら
こうして時を生きているんだと
あたりまえのことであったが
さらさらとしたものに出会えてうれしくなった




 金のつぎの銀は雪

金と銀と銅の
ワタリガラスが
山と波と雪の上を飛んでゆく
金と銀と銅を集めて

屈曲したポテトチップのような
冬枯れた山々を
バロックな真珠いろの
雪が飛ぶ



雪、雪



金と銀と銅を集めて
シャチが波の上を飛ぶ
イヌイットが雪の上を飛ぶ
金のつぎの銀は雪でなければならないという夢伝説の
雪が飛ぶ


                  

 ゲルベゾルデ

帆は
尾は
風に吹かれて
流れゆくケルト

民よ

滅びゆく
ゲルベゾルデ紋様



群れ
                  




 犬とオオカミを区別できなくなる
        きわめて危険な畦道に咲いた野菊を踏みつつ


二上山(ふたかみやま)へ沈みゆく日輪と
ほれ! 
かけっこだ

工場をぬけて
畑を駆けて
あぜみちを突っ走る

ぼくと 
ぼくのともだちと
遠つ飛鳥や近つの飛鳥

そんな幻よりも加速をする日輪のやつ
はやいな速いぞ
時はあんなに突っ走って




 花売りのロバ



ロバを飼っていたことがあった
そいつに荷車をひかせて
パンを売っていたんだ
だんなさまがパンをつくって
おいらがそれを売っていた

はじめはうまくいっていたが
だんなさまは夢ばかり見ていたし
おいらは大酒飲みの無学だったから
朝から晩までロバの尻をたたいて暮らすことしか知らなかった
そんなある日のこと
飲んだくれて昼寝をしているうちに
ロバは出ていってしまった

だんなさまはおかまいなしに
夢のつづきを見たくなったのであろうか
無残にも愛馬ロシナンテを真っ二つに切りさいて
胴体のうしろを肉屋へ売って旅の路銀にしてしまった
そして胴体の前へうちまたがって
「サンチョ、ついて参れ!」と叫んだ
もうこれでおいらは
ルナという名前のロバを探すことはできなくなった



狂気じみて旅をするだんなさまは
アルプスの少女ハイジを娶らんがために躍起となって
ピレネーの峠をこのようにして超えていくが
おいらにはロバもなく
ヒビ割れた裸足のまま歩いているから
寒さは一番のにがてだから
このまま真っ直ぐ北へ向かって行くだんなさまには申し訳ないけれど
おいらは崖から落ちるふりをして
ガラガラ・ゴロンと海のみえる南の方へころがり落ちた
そこはサンジャンカップフェラという詩人の村で
港の近くにはうってつけの酒場があった
そこで冷たくなった体を温めようとポケットをまさぐったが
はじめから文無しであったことに気がついた

おいらは礼拝堂の神父様に泣きついて
村の酒場で一曲歌っては酒にありついた
そしてまた一曲歌っては酒にありつくという日々を過ごしていたが
ある日 その酒場へ花売りがやってきた
花売りといってもかわい子ちゃんじゃないんだ
ロバの背に花桶を乗せて花を売り歩く花売りだった
あッ! と驚いておいらは大きな口をあけたまま
二番の歌詞も三番の歌詞も忘れて舞台の上でつ立ってしまった
いたたまれずにそのまま楽屋をぬけだして
嘔吐しながら路地裏へしゃがみこんでしまった



ロバは忍耐の鏡なのだ
その忍耐という鏡を打ちすてておいらから逃げていったロバが
いまは気位も高々と着飾ってとぼけながら
ひげづらの立派なロバ使いとともに花を売り歩いていた
銀の轡(くつわ)もしっかりとはめられて



忘れるものであろうか
うさぎのようにぴんと張った両耳のあいだには
かわいらしい巻毛がくるくるしていて
それはまるで絹のリボンのようであったから
瞳は青い月のようであったから 
あのロバは ルナ・・・



あれからもう花売りはやってこなかったが
やっぱり酒は飲みたくて
おいらは仮面をかぶって歌っていたが
その日はあいにくの雨だった
するとひとりの男がかけこんできて
酒をあおってまた飲んだ
あれは花売りロバ使い
ルナはどこにいるのだろうか・・・
楽屋からまたぬけだして角をまがったその途端
せまい路地に傘をかざされているロバがいた



雨はなお降りつづいている
ルナの背中の重い花桶には古い新聞紙がのせてあって
花はひとつも売れてなかった
雨に濡れるルナの首筋はいくぶんほっそりしていたが
尻尾のあたりには肉が薄っすらと張っていて
べつだん鞭の痕もないのだから
きっと幸せ・・・ と
そんなふうな顔はしていたけれども
ルナはなぜか見捨てられたように立っていた

自慢のかわいい巻毛のリボンは雨に垂れて泣いているし
尻も黒々と濡れている
噫 ずしんとなって泪をぬぐおうとしたとき
ルナはその不完全燃焼な青い瞳をゆっくりとあげながら
こちらをふりむこうとした が
そのあとのことはわからない
おいらは目をそらしたまま今日の雨の一粒となって
卑怯にもこの詩人の村を逃げだしたから




 みなぎりて


きらわれものの
毛虫 毛虫
どこにいるのかわからない
葉っぱのうらにかくれてござる
みなぎりて みなぎりて

庭の草花のびました
白ゆり 芙蓉    
うっとりするほどいい匂い
ジャコウアゲハも飛んできた
みなぎりて みなぎりて

みっともない毛虫
綺麗な蝶々
ふたつをそっと見てごらん
どちらもいのちが光っているよ
みなぎりて みなぎりて




 春待つ犬


上弦の月 冴え冴えとして
早春の風 人肌を刺す
転倒自転車の横 鎮座する
とぼけ顏の 白い犬

荷台篭より 散らかる品々
百花繚乱 雑貨店をなす
「ぼくじゃないよ、ぼくじゃない」
そう言いたいけれど 喋れない

夜々の人々 皆のぞき込む
犬と自転車 風に舞う品々
「ぼくじゃないよ、ぼくじゃない。
風の又三郎が蹴飛ばしたんだ」

そう言いたいけれど 喋れない
春未だ遠くして 主(あるじ)待つ犬
紅い梅一輪 鼻に飾って
可成りおとぼけな 白い犬




 それから


いつものように早起きをした
琥珀というなまえの犬とさんぽをした

とおりすぎていく風とであって 
「おはようございます」って挨拶をした

それからごえん玉をひろった
人にふまれていてキズがついていたが

夏はあついから
また元気よくあるいた

それから・・・
きょうも佳い日でありますように って