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W e l c o m e !

VIVA MICHIHICO MIGUMI                    

WEB MUSEUM                

Atelier Snow_Drop

Illustrator & Poet

 





 

 














N A T U R A L G R O U N D
                 いま、わたしは此処にいて・・・
  とバラ色のファンタスマゴリエ


1877年にトマス・エジソンが蝋管蓄音機を発明したころ、オーストリア・ハンガリー二重帝国の皇妃であり王女であったエリザベートは、レマン湖畔で一人のアナーキストに刺殺された。以前から私はこの事件に興味があって2〜3枚の絵を描いたことがあったが、それだけのことであって、それ以上は発展させることが出来なかった。しかしコロナ禍にあって、毎日のように図書館へ通っているうち、バラバラになっていた歯車が一つの機器にでもなったかのように符合し、動きはじめていった。


アナキストと皇妃との出会いはひとつの“恋愛”であり、ジャン・コクトーがいうところの「存在」と「観念」の悲喜劇であろう。それへ狂王ルードヴィッヒIIの頭蓋骨を傍へ置いて慈しんでいる皇妃の姿をつけ加わえておきたい。皇妃はジグザクとヒビ割れる頭蓋骨の環状縫合線から王の筆跡ともいえる恋文を読み解いて、懐かしんでいる。けれども石切場のグロッタで働くアナキストは、皇妃がカフェに置忘れていったレースのハンカチーフ紋様を水晶の石へ刻むたび、蝋管蓄音機の溝で振動する針のようなノミの振動から、皇妃と狂王の睦言を聴いていた。


二つの振動はあまりにも異質であるが、暗殺という一瞬において共振するであろう。父親を知らず、母に捨てられたジュネのようなアナキストと、死に憑かれた皇妃エリザベートは、メロンパークの魔術師エジソンが廻す蓄音機に踊らされて楽しそう・・・。私でさえも、ファンタスティック・アニマルの一員となって、スズ箔の器(初期型蝋管蓄音機)のなかで振動している美酒の波形に憑かれて酔っぱらう。なぜであれば、狂王も、皇妃も、アナキストも、魔法使いも、誰も彼もが、みんな死んで生きているからである。死者は死者どうし、音を貯蔵した蓄音機の響きにも似たテレパシーで話し合っているようでならない。それが時々、生きている者の耳や脳というよりも、空っぽで透徹な魂に向かって飛んできては通過してゆく。もしも響きの一瞬を逃してしまえば、正体はただ風の野郎が翔て走っていった通り道でしかない。


コロナ禍で、私は歴史のなかで吹きたまっている史実をジャンクにコンバインして、より仮想的に彩った古い幻影機(ファンタスマゴリエ)のフィルムのような世界が描けたらと、フッとそんなことを考えていた。


なら二人はどこへ行くのか・・・ 咒物である銭ッ子が刻印されている金貨・銀貨の境目にはエッジがあるが、人は裏表に馴染んでも、エッジには無関心だ。見てはいるが見えてはいない世界の隙間、そんな“ナチュラル・グランド”で生きのびるであろう。当り前すぎて、人工知能(AI)が見落としてしまう処、そこがナチュラル・グランドなのだ。なにをどう描くかはともかくも、そのようなグランドが必ずあることを信じて、楽しく描けばよいと思っている 。


ここへと至ることのはじまりは、ボルヘスの謎めいた短編『アステリオーン(ミノタウロス)の家』からだった。頭蓋骨も、家も、器であって、悲哀をおびた牛頭人身の怪物がうろつき歩くたび、楽器となったグロッタの迷宮は悲しく揺れて響きだす。私はその慟哭を都立赤塚公園にある古びた樹木へもたれながら聞きかじっていた。樹木の枝の切先は蓄音機の針であり、クオーツの風を逃がさなかったからだ。これは喩えであり、アステリオーンが棲まうグロッタの迷宮から遠く離れていても、クオーツの風さえ響けば、牛頭人身の姿をした怪物の孤独はいとも簡単に見出せたのである。このようにして、私は1898年9月10日のレマン湖に吹いた血の風もかくの如くに見えたのであった。


人は誰もが父や母からなんらかのギフトをもらって生きている。父や母は祖父や祖母から、祖父や祖母はそのまた父の父、母の母からギフトをもらい運良くも、咒物の企てや魔の手から守備よくすり抜けこの“今”を生きている。私の“ナチュラル・グランド”は、死して生きのびてきたあらゆる命への讃歌であり、希望なのだ。


機器のミス(悪意)、バイアス(偏り)やトリミング(死角)によって取り残されていく人。魔杖のハンドルを握って我れ先につッ走る人。人工知能やオンライン・システムなんぞ糞くらえだ。なぜであれば、これまでの機器とは違い、昨今のメディア環境は我々人間だけの問題ではなく《機械とプログラムと人間》とがあまりにも深い関係にあり、あまりにも微妙な状態で共生していかなければならないからだ。私にはそれが怖すぎる。と、まあ、ここでボヤイテも仕様がない。時間だけが知っていることだから。(終)


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         Noie et roseNoie et roseNoie et roseNoie et rose
         Noie et noëlNoie et noël Noie et noëlNoie et noël

                    et

        Noie et rose FantasmagorieNoie et rose Fantasmagorie
        Noie et rose FantasmagorieNoie et rose Fantasmagorie
        Noie et rose FantasmagorieNoie et rose Fantasmagorie

              Noie et rose Fantasmagorie






           と バ ラ 色 の フ ァ ン タ ス マ ゴ リ エ は
               きれいなお陽さまの光なんだ!



          
                     降りてくる手/歴史の天使
                         606×455 2020







                          
                    降りてくる手/新しい天使
                        606×455 2021   








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雲間に輝いた”天使の梯子”!!
すぐ消えていく、一瞬のできごと・・・

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