POETRY DIARY
かくして、この国には革命がなかった

毛生え薬売り男ゴルゴンゾーラ
(或は、新政権前夜)

 毛生え薬売り男ゴルゴンゾーラ

どこぞのだれかの旗振りなんぞしやがって
ああ言われればこう言って こう言われればああ言って
おれたちを煙にまこうとしているが

ぺらぺらしゃべるわりには言葉がうすい
ひどいもんだな
この期におよんで まだ旗を振っていやがる

ありゃ 毛生え薬売りとおんなじだ
生えてくるあてなどないくせに
もっともな顔をして毛生え薬を売りつけやがる

客が「買ってつけたのに生えないじゃないか」と問答すれば
「お客さん この薬をつけなきゃ髪はもっと早くぬけてましたよ」と
手垢にまみれた野良虫みたいな口上をのべやがる

まったくもってイカサマな野郎だぜ
はい ありゃゴルゴンゾーラという伊達男にござんす
けへッ 道理で青クサイと思ったぜ



 
金 玉

この国にはなぜ戒めがない

なぜ

この国にはなぜ贖いがない

なぜ

公金をねこばばした奴を
なぜ追いかけない

なぜ

奴らの脂ぎった財産をなぜ没収しない

なぜ

ことに応じなければ
その命をなぜ頂戴しない

なぜ

なぜ なぜ なぜだ

そいつを許すということは
つぎからつぎと
甘い果実をくちゃくちゃ舐める奴が現れて

つぎからつぎと
雨後の筍のようににょきにょき現れ
独活の大木のような役たたずが現れ

にょきにょきにょきにょき こそこそと
朝となく昼となく夜となく蛭になり

おれたちの血を汗を
面を
ぺろぺろと舐めやがる

なぜ

踏みつぶしてしまわぬ
汝が盗みをしたならば
君やおれたちならばイチコロだぜ

まあ まあ まあ

そんな青クサいことなんか言わないで
「人間はみな不完全なのだよ」

許しましょう
忘れましょう
前へ進みましょう

なぜ

なぜ なぜ なぜだ

分らない
あほクサくって分らない
クサいぞ臭いぞ爺の金玉



 
吸血びとん

あまくだりびとん
くだらないびとん
びとん びとんの爺びとん
ねむってるびとん
血吸うびとん
ひる だに あぶ か
かッ かッ か
あぶのうまるな
あぶないびとん
びとん びとんの爺びとん
ゼニ蔵建てた
蔵建てた
ゼネコンびとん
蔵建てた
ああ! こりゃこりゃの
やれ やれな
あまくだりびとん 爺びとん
ぐにゃちんびとん 爺びとん
びとん びとんで
とんびもあきれて
ヘヘッ 屁をこいた



 
ジェニトルマン

ゴルフ場の球のころがりとひきかえに

鳥は
虫は
植物は

みなだまし討ちにされ
ねこばばされて
カラカラになった屍の上を
灰色の木端役人や
ジェニトルマンたちが
バカ笑いしながら踏み越えていく



 
なむあみおだぶつ

雑木林にシャベルカーが置いてあつた
座席のうしろに「グリーン開発」と書いてある
つぎの日の朝
なにを開発しているのかと思って行ってみると
樹木をぜんぶ引き抜いて
bの3番
gの4番
fの6番
eの5番
なにがなんだかむちゃくちゃに植えかえていた
チェスのゲームじゃあるまいし
ととんと とんまな勘違い
区立『野鳥の森公園』だなんて
とっても明るく洒落ちゃったけど
いつも鳴いていた野鳥がもうよりつかない
カブトムシの幼虫も
ミミズも
花も
球根も
タネも干からびている
「グリーン開発」だなんて大嘘こいちゃって
シャベルカーがベラベラ・ガラガラ・ドタバタと
野鳥に変ってさえずり回る

やれ鳴け はよ鳴け 四十雀
(ジュクジュクツィピー ツィーピー)
やれ鳴け はよ鳴け 仏法僧
(ブツブツホッホー ナマンダー)
ついつい泣いたぞ つい泣いた
南無阿弥陀仏 南無阿弥おだぶつ

ジュクジュクツィピー ツィーピー
ブツブツホッホー ナマンダー




 
くるぱーせんと

賛成します 賛成賛成! 50%
反対します 1%
どちらとも言えない 49%

どんぐりころころ 49粒
どうでもいいや 49粒
泥んこまみれクソまみれ

お池にはまってさあ大変
さあさあ大変!
さあ大変!!


お池にはまってどうするの
どうでもいいや 12粒
どちらとも言えない 12粒

賛成します 7%

反対します 反対反対! 81%
どちらとも言えない 12%

どんぐりころころどんぶりこ
どじょうが出てきて
ハイ! こんにちは



 
風の唄

だれかがどこかで唄っているよ

  ホニョ ホニョ ホニョ
  崖っぷちの上のホニョ

あれは「崖の上のポニョ」の替え唄だ
だれが唄っているのだろうか

  ホニョ ホニョ ホニョ
  崖っぷちの上のホニョ

流行と言う名の花びらの裏に咲いている
あれは戯れ唄

世界の子どもたちが血を流しているというのに
世界はもう隠しきれなくなっているというのに

  「ポニョ ポニョ
     崖の上のポニョ」

こんどはなにが流行るのだろうか
妙に楽しげな唄なんか鼻からうんざりなんだ

  「ポニョ ポニョ
     崖の上のポニョ」

人々のもだえや考えを塗りつぶしてしまう唄と戯れ唄
そんな唄をぼくたちはハミングし続けるわけにはいかないんだ

冷たくて透明な風が吹いている石段の上に座って
ぼくたちはぼくたちの唄をハミングしようよ

忘るるな
ぼくたちはぼくたちの唄をハミングしようよ

  ドレミファソラシド
    ドシラソファミレド

たとえ唄なんか上手く唄えなくても



 
玩具の勲章

不景気ってなんだかいやんなっちゃうな
あんなに上手くいっていたのにさ
たとえばさ
おれは外人部隊の用兵で
きさまは正規軍のれっきとしたお偉いさんだ
だけどそれがなんなのだ
おれだって勲章の一つや二つぐらいは持っているぜ
欲しけりゃきさまにくれてやるさ
だが おれたちはいつだって力をあわせて戦って
そして今日までこうして生きてきたんだ
きさまは玩具のようなピカピカの勲章を手放したくなくって
それでおれを奴らに売っぱらい
きさまは今日から赤の他人さまってことか
なんだかいやんなっちゃうな大将さん
不景気とは
見たくもないものを見せる魔法の鏡だぜ



 
はなくそ

国会はガキのお砂場じゃあるまいし
鼻をかんでから
もうちょっと真面目にやってくれ

おいおい!

かんだ貴様の鼻紙は
あちこちへポイポイ捨てるなよ
汚ねいから



 
バカばっか

地下で眠っている天然資源を
一部の人間たちが勝手にほいほい掘り出して
ほい ほい ほいっと
ほんとうにそれでよいのだろうか
そのうち地球はいかれちまって
  夜ばっか
   昼ばっか
    墓ばっか
バカばっかしで
地球の独楽はいまにも止まるぞ
止まってしまえば
〈貴様!〉
リッチもサッチもあるものか
骨とモグラと
閑古鳥の国だけで
おれも貴様も
もう天然資源になってしまうぞ



 ヌーヴェル・ギャク・卍氏

裁かれるべきヌーヴェル・ギャク・卍(マンジ)氏が
なにゆえにそのものを裁く

我々は手も口もだせないまんま
鋭い裂け目を入れられて

吹き荒れる旋風の中でゆっくりと
そしてあっさり解体されてゆく

裁かれしものは絶望の中にあって
ひとつの未来を産み堕とす

がヌーヴェル・ギャク・卍氏は色情のダンスを垂れ流したまま
その皮膚のたるみを黒ずんだ群衆の海へと隠しつづける

かくして
この国には革命がなかったので

産み堕とされた精神は
たえず断片的に旋回したままたるんでいて

かのヌーヴェル・ギャク・卍氏の磁場へと
無意識のまんまこっそりとひきずり込まれてゆく

未来であるべき手負いの子供らは 虫や花や獣たちは 鳥や魚は………
ちちははの十字架も旗も立てられずに



 
おままごと

あさっての方角へ心も目もむけているうつろな輩(やから)が
「抜本的に」「抜本的に」と こうるさい

その一言に集中して
「粛々と」「粛々と」逃げ回っている

こんどはなんだろうと思っていたら
「スピード感をもって」がどうやら流行っているらしい

スピード感という快いひびきに惑わされ
のたのたと ぶらぶらと溺れてる

紅い毛氈でおままごと遊びしている似非な言葉を
聞かされる側は食傷ぎみだ!

フランスの偉い人が言っていた

スピードとはその速さではなく
「正しく決断のできる有能な人材を“確保”しているかいなか」だと

抜本的に? 粛々と? はやとちりばかりしている
うつろな輩たちのことではない



*そもそもお金とは物品と交換し、還元されるものであり、これがいつしか欲の権化となりはてた。使う予定もないほど貯め込んで、だれにも回そうとしない欲望のお金。リーマンも、あの人も、この人も、みんなトリコになっちゃった!

                
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